現在の在庫評価方法は、取り扱っている商品に適しているでしょうか。
商品や自社の体制によって正しい在庫評価方法を選ばなければ、思わぬ税負担がかかってしまうことがあります。
在庫評価とは何かから、在庫評価方法の種類とそれぞれのメリット・デメリット、在庫の状態などで生じる在庫評価損・在庫評価益をどのように処理すればよいかについても確認していきましょう。
在庫評価とは?
在庫評価とは、一年の決算時や月次の損益計算時に、在庫を金額として算出することです。
会計上、在庫は棚卸資産として計上されます。期末の決算をするときには全ての在庫を金額化する必要があるのです。
在庫は将来的に金額化される資産と見なされるため、在庫評価額が前年度よりも高くなれば、それだけ法人税などがかかることになります。
在庫とは何を指しているのかというと、販売を目的とした商品や製品、原材料、仕掛品などを指します。
また、棚卸資産は会計の専門用語で、在庫とほぼ同じ意味で使われます。
在庫評価額を算出するには?
在庫を金額化したものを在庫評価額といい、在庫総数×売上原価で計算されます。
売上原価とは、商品の仕入れにかかった費用です。
例えば、売上原価が200円の商品の在庫が期末に5個残っていた場合は、5個×200円=1000円が在庫評価額になります。
計算自体は単純ですが、商品の種類が多くそれぞれの売上原価が異なる場合や、季節・仕入れ個数によって売上原価が変わる場合があります。
そういった場合に適した在庫評価方法を選ばなければ、決算の際に思わぬ損額が増えることにもなりかねません。
在庫評価方法は「低価法」と「原価法」がある
在庫評価方法には、大きく分けて「低価法」と「原価法」があります。
低価法とは、仕入れ時の原価と計算時の原価(時価)を比較し、低価な方を用いて計算する方法です。
流行に左右される商品など、原価が大きく下がるのがあらかじめ予想される商品を扱う小売店などで、よく採用されています。
一方、原価法では、仕入れ時の原価を元にして計算します。
しかし、期末の在庫を見てどの商品がどの時期に仕入れたものなのかを個別に判別するのが難しいこともあります。
例えば1ヶ月のうちに2回、20個ずつ仕入れたとします。
1回目には原価100円で、2回目には原価110円で仕入れました。
月末に在庫が30個残ったとして、どの商品がいつ仕入れたものなのか調べて計算するのは時間がかかります。
在庫評価方法の「原価法」の種類
在庫評価方法の「原価法」の場合、どの商品がいつ仕入れたものなのか調べて計算するのは時間がかかるので、原価法には以下の6種類の計算方法があります。
- 最終仕入原価法
- 個別法
- 先入先出法
- 総平均法
- 移動平均法
- 売上還元法
それぞれの在庫管理評価方法の特徴について確認していきましょう。
最終仕入原価法
期末に一番近い日に仕入れした時の原価を用い、評価する方法です。
在庫評価の中で最も計算が簡単かつシンプルなため、一般的に広く採用されています。
ただし、在庫評価額が期末までわからない、原価変動が大きくなった場合は実際にかかった費用よりも多く算出されるというデメリットもあります。
個別法
各商品の仕入れ時の原価で評価する方法です。
取り扱う商品の種類や数が多い場合には、複雑になるため不向きでしょう。
宝石や貴金属、不動産を評価するときに用いられます。
先入先出法
「先に仕入れた商品から順番に売れていく」という考えのもとで評価する方法です。
例えば、1回目と2回目に20個ずつ、合計40個仕入れて期末に残った在庫は、1回目に仕入れた20個の内の10個が売れた残りの30個ということになります。
この期末の在庫評価額は、
10個×100円(1回目仕入れ時原価)+20個×110円(2回目仕入時原価)=3,200円
>になります。
この方法は実際の販売の流れに近いので、わかりやすいのがメリットです。
総平均法
期首の在庫仕入れ価格の総額と、期中の在庫仕入れ価格の総額を合計をして、総在庫数で割ることで単価を求める方法です。
つまり、在庫仕入れ単価の平均金額を求めることになります。
計算がシンプルで、原価の価格変動にあまり影響を受けないことがメリットです。
一方で、期末まで計算できないので現状がわかりにくいことがデメリットになります
移動平均法
仕入れ時に、その時点の在庫金額と仕入金額の合計を、在庫数と仕入個数の合計で割って原価の平均金額を求める方法です。
仕入れをする度にその都度計算をするので、期末を待たずに現状把握ができます。
また、総平均法と同様に価格変動の影響はあまり受けません。
デメリットとしては、在庫数を常に正確に把握しておく必要があり、仕入れの度に計算しなければいけないという手間があります。
売上還元法
売上の合計に原価率をかけた金額で評価する方法です。
取り扱う商品の種類が多く、それぞれの原価が把握できない場合に使われます。
主にスーパーや百貨店などでよく採用されています。
デメリットとして、原価率でまとめて計算するので本来の原価から多少誤差が出ることが挙げられます。
在庫評価方法の届け出について
新しく事業を始める際に、在庫評価方法を選定したら「棚卸資産の評価方法の届出」という書類を所轄の税務署に提出する必要があります。
提出期限は、事業を開始した年度の確定申告までになります。
ただし、「最終仕入原価法」を選択する場合は最も一般的な方法になるため、届け出は不要です。
在庫評価方法を変更する場合には、次年度の事業開始前日までに変更理由等を記載した申請書を税務署へ届け出なければなりません。
さらに、変更するには現在の評価方法を採用してから3年が経過している必要があります。
これは、評価方法の変更が短期間に行われることによって、各年度の所得金額が適正に行われないとみなされるためです。
在庫評価損・在庫評価益とは?
在庫評価損は、「商品評価損」とも呼ばれ、商品の価値が下がることによって、仕入金額よりも下回る金額で販売したことで発生する損失をいいます。
商品の価値が仕入額より下がる可能性があるのは、破損や劣化した商品、季節性やイベント性が高い商品、一時的な流行を追うような商品などです。
在庫評価損は、在庫評価金額ー販売金額によって計算されます。
例えば、在庫単価が200円の商品を、劣化を理由にして180円で販売した場合、その差分は20円になります。
このときの在庫数が50個だった場合、在庫評価損は20円×50個=1000円になるということです。
反対に在庫評価益とは、取得する際に仕入れ額が低い場合や高値で売れた際の差額などのことで、いわゆる含み益のことになります。
在庫評価損を最小限にするには
在庫評価損(商品評価損)を最小限にするポイントは、余分な在庫を持ちすぎないことです。
在庫が多くなれば回転率が低くなり、結果として流行が過ぎた、経年劣化したなどで売れる見込みが少なくなった不良在庫が増えることになります。
在庫評価損を最小限にするには、具体的に次のような方法が考えられます。
- 適切に在庫管理をして適正在庫を維持する
- 在庫回転率を上げる
- 在庫を極力減らす
在庫管理を常に適切に行い、過剰にならず販売時に欠品をおこさないよう適正在庫を保つことができれば、在庫評価損を減らすことにつながります。
また、在庫回転率を上げるのも方法の一つです。
在庫回転率とは、一定期間に在庫が何回入れ替わったかを示す値です。
在庫回転率を上げることで、商品を長期保存することによる品質劣化を防ぎます。
在庫回転率を上げるためには、売上金額を上げるか一定期間の平均在庫を減らす必要があります。
これらも方法ではありますが、そもそも在庫をできるだけ多く持たないようにするのも重要です。
商品を欠品して販売機会を失うのは困りますが、在庫が多くなればそれだけ長期保存による劣化の可能性が高まり、管理にも費用がかかってしまうからです。
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在庫評価は、在庫を長期保存したために生じた劣化や破損、季節性の高い商品の商品価値が原価より下がったことで生じる在庫評価損をいかに少なくするかが大切です。
そのため、在庫評価を適切にするためには在庫管理を徹底することが必要不可欠といえます。
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