在庫管理を仕事にしている人にとって理想的な状況は「需要≒供給」の成立ではないでしょうか。
すなわち、注文を受けて出荷する数量とその注文に備えて予め仕入れておく数量がほぼ一致しながら推移することです。
そのためには「在庫分析」が欠かせません。
在庫分析をし、需要の動向を把握して受発注と在庫の数量をコントロールすることで適切な在庫管理が行えます。
在庫分析とは何かから、在庫分析の指標と在庫分析の手法・方法を確認していきましょう。
目次
在庫分析とは?
在庫分析とは、「在庫品の数量や金額を確認し、これらについて分析を加えていくこと」です。
より正確かつ緻密な在庫分析を実施することで、在庫管理している各商品の売れ行きが明確にわかります。
各商品の売れ行き動向がわかれば、各商品の入荷量をどう調整すればよいかといった対策が講じやすくなります。
さらには「この商品はもっとプロモーションを強化しよう」、「この商品は在庫が切れたら取扱いを終わりにしよう」といったように商品ごとの販売戦略に直結していきます。
こうした点から在庫分析は経営部門、管理部門にとって非常に重要です。
在庫分析を行うメリット
在庫分析を行うことで、どの商品がよく売れているか、どの商品があまり売れていないかといったことが明確にわかるメリットがあります。
「在庫している各商品の売れ行きを正確に把握すること」そのものが在庫分析の最大のメリットといえるかもしれません。
在庫商品ごとの売れ行き情報が把握できれば、「在庫を適正化するための取り組み」をより具体的に進めることができます。
たとえば不良在庫を減らすために、販売不振となっている商品の販促方法を見直したり、優良在庫を増やすために、売れ筋商品の販促強化を行ったりするなどの販売戦略を講じることができます。
在庫分析に重要な5つの指標や方法
より正確な在庫分析を行うためには、在庫の状況を反映する指標や根拠となる数値をしっかり把握する必要があります。
そのような在庫管理の指標として、
- ABC分析
- 在庫回転率
- 在庫回転期間
- 交差比率
- デッド在庫・緩動在庫
が挙げられます。
在庫分析に使える在庫管理指標について確認していきましょう。
ABC分析
取り扱っている商品の品目数が多い場合、よく売れる商品がある一方で、売れ残りがちな商品が出てきます。
「ABC分析」は、取り扱っている全商品から売れ行きのよい順に商品をA、B、C、とランク付けしていく手法です。
そして、ABC分析によって商品のランク付けを行ったら、上位ランクの商品を重点的に管理する一方で、動きの鈍い下位ランクの商品は在庫を圧縮したり、処分したりすることを検討します。
もし売れ残りがちな商品が倉庫内でかなり大きなスペースを占有していたとしたら、不必要なものにスペースを割いているということになり、倉庫を有効活用しているとはいえない状況にあることがわかります。
それならば、そのスペースを売れ筋商品の保管スペースとして使いたい。こうした判断を適切に行って在庫状況の改善を進めていくためのより強い根拠として、ABC分析によって得られる情報が貴重になります。
在庫回転率
「在庫回転率」は在庫が、一定期間(期や月など)のうちで、どのくらい回転したか(=入れ替わったか)を示す数字です。
在庫回転率は、次のような式で算出します。
在庫回転率 (回)= 売上原価 ÷ 平均在庫高
売上原価は期首商品棚卸高に当期の商品仕入高を足し、そこから期末商品棚卸高を引くことで算出します。
平均在庫高は期首商品棚卸高と期末商品棚卸高を合計した額を2で割って算出します。
こうして求めた在庫回転率が1であった場合、その期間内に1回在庫が入れ替わった、在庫回転率が2なら、期間内に2回在庫が入れ替わった、ということになります。
在庫回転率が高いほど売れ行きが高い商品であることを示していますので、在庫回転率が高い商品は欠品リスクに配慮したり、1回の入荷量を増やすことを検討したりする必要があります。
一方、在庫回転率が0に近づくにつれて、その商品はほとんど動かない(売れない)ことを示しますので、今後の入荷について見直す必要性が出てきます。
在庫回転期間
「在庫回転期間」とは仕入れた在庫品が全て売れるまでにどれくらいかかるかの期間を示します。
在庫回転期間は、次のような式で算出します。
在庫回転期間 = 在庫金額 ÷ 売上原価(もしくは売上高)
在庫金額は、在庫品の数量に単価をかけて算出することができます(在庫金額は棚卸資産とも呼ばれます)。
また、売上原価は期首商品棚卸高に当期の商品仕入高を足し、そこから期末商品棚卸高を引いて算出します。
売上原価の代わりに売上高で在庫金額を割って在庫回転期間を求める方法もありますが、より正確に在庫回転期間を求めるなら売上原価を用いた方がよいでしょう。
在庫回転期間の値が小さくなるほど、在庫の入れ替わり期間が短いということになります。
よく売れている商品は在庫回転期間が短くなる傾向があります。
逆に在庫回転期間の値が大きければ、在庫の動きが悪い商品、すなわち売れにくい商品であるということになります。
交差比率
商品は粗利が微少であればたくさん売れないと儲けは出ません。
一方、粗利が高くてもなかなか売れないようでは儲けが出ません。
儲けを出すためには粗利益と在庫回転のバランスをよくすることが求められます。
儲けがしっかり出たかそうでないか、あるいは在庫がどれだけの利益を上げているかを評価するための指標として「交差比率」が使われます。
交差比率は、次のような式で算出します。
交差比率 = 粗利益率(%)× 在庫回転率(回)
交差比率が高ければ高いほど、しっかり儲けが出ている成績のよい商品ということになります。
たとえば1年間を通してみて、粗利益率が30%で在庫回転率が6回の商品Aと、粗利益率が3%で在庫回転率が50回の商品Bを比べてみると、商品Aの交差比率が180、商品Bの交差比率が150となるので、商品Aの方が商品としての成績がよいという評価ができます。
デッド在庫・緩動在庫
「デッド在庫」とは、型落ちや流行の終焉などで市場に出せなくなった商品のことを示します。
また、「緩動在庫」とは全く売れないというわけではないけれどほとんど売れない商品を示します。
デッド在庫や緩動在庫は、ABC分析でいえばもっとも低いランクに位置する商品群となります。
つまり、今後、売れる見込みが立たず、保管コストばかりがかさんでしまいがちな在庫品です。
在庫分析においてデッド在庫や緩動在庫の有無を確認すること、そしてデッド在庫や緩動在庫があるならばそれをきちんと特定することは非常に重要な作業となります。
デッド在庫や緩動在庫が特定できれば、これらの在庫品において今後の入荷をどうするか、廃棄処分の手続きをどう進めるかなどの対応策が講じやすくなります。
在庫分析に使用する3種類のグラフ
在庫分析は「見える化」することで取り組むべき課題や進むべき方向性がより明確になってきます。
在庫分析を行うときによく使われるグラフとして、
- ヒストグラム
- Zチャート
- 流動数曲線
が挙げられます。
それぞれの在庫分析に使用するグラフを確認していきましょう。
ヒストグラム
「ヒストグラム」は、統計学でもっともよく使われる棒グラフの一種です。
度数分布図、柱状図、柱状グラフなどとも呼ばれます。
ヒストグラムでは横軸のデータを階級(年齢層、性別など)に区分けして、縦軸に各階級に含まれるデータの数量(個数、金額など)を取ります。
ヒストグラムではどの階級にどのくらいの数量が分布しているのかが一目でわかるので、傾向をつかみ、対策を立てるのに有効な資料となります。
ヒストグラムは在庫分析においては、商品とユーザーの年齢層の相関関係などを調べるのに有効です。ヒストグラムはExcelで作ることができます。
Zチャート
「Zチャート」は、Zグラフとも呼ばれる折れ線グラフのことです。
3つの数値の推移をグラフ化し、これらがZのように見えることからZチャートやZグラフなどと呼ばれます。
Zチャートでは月別で見た商品の①売上数や売上金額、②売上の累計数や累計金額、③移動合計の3つの数量をグラフ化します。
なお、移動合計とは前年翌月から現在月の合計数を示します。
たとえば現在月が6月なら前年7月から今年の6月までの数値を合計したものとなります。
Zチャートでは、移動合計が右肩上がりならば数値は増加傾向、右肩下がりならば数値は減少傾向にあると判断することができます。
流動数曲線
「流動数曲線」もZチャートと同様、3つの数値の推移を示す折れ線グラフ化です。
流動数曲線では月別で見た商品の①累積計画、②累積実績、③仕掛品在庫の3つの数量をグラフ化します。
計画と実績(実際の出荷)のバランスが保たれているときは、累積計画と累積実績の2本の線はほぼ平行の状態で推移します。
しかしバランスが崩れると2本の線が近接したり乖離したりします。
流動数直線を作り、これを俯瞰することで、計画と実績の変動(発注の急増、停止など)が行われた時期が一目でわかります。
またこれらの変動に対してどのように在庫をコントロールしたかもわかります。
効果的な在庫分析の実現にもzaico
在庫分析を行うことで、経営現況と課題、改善のための方向などがより明確に見えてきます。在庫分析は経営のカギを握る非常に重要な業務です。
在庫分析を正確に行うためには在庫の状況を正確に把握する必要があります。
在庫状況の正確な把握のためには、在庫管理システムの利用が効果的ですので、「クラウド在庫管理システムzaico」の導入をご検討ください。
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