一見似ているように見えますが、属人化とスペシャリストは違いが大きくあるものです。
属人化は避けるべきと分かっていながらも抜け出せなかったり、スペシャリストの育成が進まなかったりする企業もあるでしょう。
属人化とスペシャリストの違いやそれぞれのメリットとデメリット、属人化の解消とスペシャリストの育成について詳しく解説します。
属人化とスペシャリストの違いとは?
属人化とスペシャリストは、特定の人が集中的に業務に行うという点が共通するため、似ていると感じるかもしれませんが、実際にはさまざまな違いがあります。
属人化とスペシャリストを比較することで、属人化とスペシャリストの違いを確認していきましょう。
専門性の違い
属人化は特定の個人に知識やノウハウが依存している状態ですが、業務に偏りがあるだけで、業務内容に専門性が必要とされることがない場合も多くあります。
特定の個人がプロジェクトの企画から進行まで一貫して対応するなど、業務が個人に集中するのが属人化の典型です。
一方のスペシャリストは、特定の業務や分野における高い専門知識やスキルを持った人材を表す言葉です。
突出した知識やスキルを発揮して、品質向上や生産性の向上、顧客満足度の向上など、さまざまな面で組織に貢献する存在です。
組織への影響の違い
属人化は個々に焦点を当てるため、組織の発展や成長に直接的な効果をもたらすことはありません。
むしろ、業務内容やプロセス、進捗状況などを特定の個人のみが把握していることで、情報共有の遅延や業務の非効率化など、さまざまな問題を引き起こす場合があります。
それに対してスペシャリストは、保有する特定の分野や領域における専門知識を可視化させています。
専門的なアドバイスや解決策を提供することで、専門性の高い組織作りに貢献し、組織の成果や業績を向上させることができます。
情報共有の違い
業務の属人化が起こっている場合、対象となる個人が知識やスキルを独占しようとする傾向があります。
自身の地位や権限を守るために、情報を秘匿しようとすることがあるのです。
一方、スペシャリストは、自分の知識やスキルを積極的に共有し、周囲の人材を育成しようとします。
組織全体の能力向上に貢献するために、情報や経験を積極的に共有します。
目的の違い
属人化では、特定の個人が自身の専門性をアピールして存在価値を高めようとすることがあります。
個人の利益を優先した考えであることが少なくないため、独裁的な行動や判断を行うことがあります。
一方、スペシャリストは組織の発展やチーム全体の成功に貢献することを目的としています。
そのため、常に組織を優先して業務を遂行し、他の社員の教育などを行うこともあります。
属人化とスペシャリストの違い:メリットから見る違い
属人化とスペシャリストには違ったメリットがあります。
大きな違いは、誰がそのメリットを享受するかという点です。
属人化のメリットとスペシャリストのメリットについて比較して違いを確認していきましょう。
属人化のメリット
組織にとってリスクであると言われることがある属人化ですが、属人化にもメリットがないわけではありません。
メリットの中には、組織にとってのメリットと思えるものもありますが、長期的な視点でみると、必ずしもそうとは言えない部分があるのです。
属人化のメリットとして考えられるものを紹介します。
個人の裁量が大きい
個々の人が自らの判断で業務を進めることができ、柔軟性が高まります。
自分の能力やスケジュールに合わせて業務を遂行することができ、より効果的な方法を見つけ出すことができます。
自分のやり方で効率よく業務を進められたり組織内の調整が不要であったりするため、心理的な負担が少ない状態であることは、メリットです。
業務成果が評価しやすい
個人の業務成果が明確に把握されやすく、個人の貢献度が直接的に評価されます。
成果主義の文化が促進されることで、属人化している業務の担当者はより成果を出そうと努力を重ねます。
自身がより良い成果を得るために必要な工夫やイノベーションを積極的に行うため、業務の精度が上がります。
モチベーションが上がる場合がある
自らの責任範囲内で業務に取り組むことで、個人のモチベーションが向上しやすくなります。
彼らは自らの成果に誇りを持ち、仕事に対する意欲が高まります。
担当業務に対する組織からの信頼が集まるため、やりがいを感じながら業務を遂行することができます。
しかし、属人化はストレスや負担が強い場合もあるので必ずしもモチベーションが上がるわけではないことは覚えておきましょう。
習熟度が上がりやすい
属人化していると、属人化が起こっている業務とその関連業務の経験が蓄積されます。
そのため、属人化が起こっていない業務に比べて、習熟度が上がりやすく、特定の個人の業務理解が深まります。
習熟度が高いほどに業務の質も高くなりますので、該当する業務の品質向上が期待できます。
教育の手間が削減できる
特定の個人に業務が属人化している場合、複数人で業務を対応する際に行われる教育やトレーニングが必要ありません。
業務についての教育やトレーニングは、対象の従業員数が多ければ多いほど手間が大きくなります。
時間や手間が削減できることだけを考えると、組織にとってもメリットとも言えます。
スペシャリストのメリット
スペシャリストは組織にとって有益な存在と言われていますので、当然ながら組織に対するメリットが複数存在します。
スペシャリストのメリットについてみていきましょう。
専門性の高さを活かせる
スペシャリストは特定の分野や領域における高度な知識とスキルを持ち、その専門性を活かして業務に取り組むことができます。
彼らの深い専門知識により、組織内での課題に対してより深い洞察や精緻な解決策を提供することができます。
最新の技術動向に基づいた戦略的なアドバイスができるため、専門的な問題に対する迅速かつ正確な対応が可能です。
業務効率の向上
専門的な知識やスキルを持つことで、業務の効率が向上し、品質や生産性が高まります。
スペシャリストは専門分野におけるベストプラクティスを熟知しているため、効率的な手法やツールを用いて業務を遂行することが可能です。
これにより、組織内のリソースを最適に活用し、作業のスピードと精度を向上させることができます。
問題解決の能力が高まる
スペシャリストは、専門的な知識や経験を活かして複雑な問題に対処し、効果的な解決策を提供する能力が高まります。
彼らは深い洞察力を持っているため、問題の根本原因を迅速に特定し、最適な解決策を見つけ出すことができます。
組織内で発生する問題に対して迅速かつ的確に対応することができるため、業務の停滞を防ぎます。
企業の競争力強化につながる
スペシャリストの専門知識やスキルを活用することで、企業の競争力が強化され、市場での地位を確立することができます。
業界のトレンドや最新技術に精通しているスペシャリストの存在により、競争相手に対して優位性を示すことができるのです。
技術革新や新製品の開発においてリードすることができれば、顧客に対して差別化された価値を提供することが可能です。
信頼性と信用の向上につながる
スペシャリストが在籍することは、組織の信頼性や信用が向上することにつながります。
顧客やパートナーに対して、専門的なサポートや高品質なサービスを提供することで、信頼関係を築きやすくなるのです。
また、スペシャリストの存在が組織のブランドイメージを向上させ、新規顧客の獲得やビジネスの拡大にも寄与します。
知識の伝達と育成を担える
スペシャリストは、自身の知識やスキルを他の従業員に伝えることで、組織全体のスキルレベルを向上させることができます。
研修やワークショップを通じて、専門的な知識を共有したり次世代のスペシャリストを育成したりする役割を担うこともできるからです。
これにより、組織の持続的な成長と発展が期待できます。
イノベーションの促進につながる
スペシャリストは、新しいアイデアや革新的なアプローチを提案する能力に優れた存在です。
彼らの専門知識と創造力により、組織内でのイノベーションが促進され、新製品や新サービスの開発、業務プロセスの改善などが実現しやすくなります。
組織が市場の変化に柔軟に対応できるようになれば、常に先進的な立場を維持することができます。
属人化とスペシャリストのデメリットの違い
メリットがあれば当然ながらデメリットもあります。
属人化のデメリットとスペシャリストのデメリットにはどのような違いがあるのか確認していきましょう。
属人化のデメリット
属人化が組織に悪影響を及ぼすことがあると言われるのは、組織にとってデメリットとなる要素が多いことからです。
属人化が起こっている状態は、企業の成長や発展を阻害する状態です。
属人化における代表的なデメリットを紹介します。
業務効率が下がる
属人化が進むと、特定の個人が独自の方法で業務を遂行するため、他のメンバーがその業務に関わることが難しくなります。
たとえば、その個人が休暇や病気で不在の場合、代わりに業務を引き継ぐ人がいないため、仕事が滞るなどです。
また、属人化された業務は標準化されていないことが多く、他のメンバーがその業務を学ぶために多大な時間と労力を必要とするため、全体の業務効率が低下します。
品質が低下する
業務の一貫性や標準化が欠如しているため、属人化した業務の品質管理は困難です。
特定の個人のスキルや知識に依存することで、作業手順や品質基準が統一されず、エラーや不良品が発生するリスクが高まります。
属人化された業務は、他のメンバーが関与しないため、二重チェックや改善提案が行われにくく、品質向上の機会が失われます。
業務負担の偏りが起きる
特定の個人に多くの業務が集中することは、その個人の負荷が増大し、過労やストレスの原因です。
この状態が続くと、その個人の健康やパフォーマンスに悪影響を与え、最終的には離職のリスクも高まります。
また、特定の個人が重要な業務を独占することで、他のメンバーが成長する機会を失い、チーム全体のスキル向上が阻害されます。
進捗の管理が困難になる
属人化された業務は、特定の個人のスケジュールに依存するため、プロジェクト全体の進捗を正確に把握することが難しくなります。
これにより、プロジェクトの遅延やスケジュール調整の問題が発生しやすくなります。
特に、複数のプロジェクトが並行して進行している場合、属人化によって各プロジェクトの進行状況を一元管理することが難しくなり、全体のコントロールが効かなくなるリスクがあります。
知識の共有が困難になる
属人化が進むと、個人が情報や知識を秘匿する傾向が強まり、組織全体での知識共有が阻害されます。
知識が共有されないことで新しいメンバーの育成が難しくなり、組織の成長を期待することはできません。
また、属人化された業務が多い場合、組織全体のノウハウが特定の個人に依存するため、その個人が離職すると、大量の知識や経験が失われるリスクがあります。
知識共有の不足は、イノベーションの機会を減少させ、競争力の低下につながることがあるのです。
リスク管理が困難になる
属人化された業務は、特定の個人に依存するため、リスク管理が難しくなります。
特定の個人が突然の退職や長期休暇を取る場合、代わりにその業務を担当できる人がいないと、業務は停滞し、重要なプロジェクトやクライアント対応に遅れが生じることも考えられます。
また、属人化された業務が原因で、組織全体のリスク管理計画が不十分になる場合もあります。
イノベーションの阻害要因になる
属人化が進むと、特定の個人が既存のやり方に固執し、新しい方法や技術の導入が遅れることがあります。
これは、組織全体のイノベーションを阻害し、競争力を低下させる原因です。
新しいアイデアや改善提案が出にくくなることで、組織の発展が停滞し、業界の変化に適応する力が弱まります。
スペシャリストのデメリット
スペシャリストには、特定の分野に対する高度な知識やスキルを有するがゆえのデメリットがあります。
組織にとって有益な存在であることは間違いありませんので、組織内での配置や他の従業員とのバランスを考慮することで、デメリットを回避する工夫が必要です。
キャリアパスが狭くなる場合がある
高度な専門知識やスキルを持つがゆえに、他の領域へのキャリアパスが限られる場合があります。
たとえば、特定の技術に特化したエンジニアが、マネジメントや異なる技術領域への転身が難しいと感じるなどです。
狭い専門分野に固執することで、他の分野での成長やキャリアの多様化が難しくなることがあります。
柔軟性の欠如しやすい
専門分野に特化することで、他の領域での業務遂行や新しい役割への適応が難しくなることがあります。
自身の専門分野に留まりすぎると、新しい状況や環境に対する適応性を失う場合もあります。
たとえば、急速に変化する市場や技術トレンドに対応できず、組織の変革に遅れをとるリスクがあるなどです。
チームワークの低下が起きる場合がある
高度な専門知識を持つ個人がチーム内で特別扱いされることで、チーム全体の連携や協力が損なわれることも考えられます。
専門知識を強調しすぎることで、他のメンバーとのコミュニケーションが不足したり、協力を得にくくなったりすることもあります。
スペシャリストの意見が常に優先されることで、他のメンバーが意見を出しづらくなり、チームの創造性や協調性が低下するといったことが考えられます。
離職によるリスクが強まる
スペシャリストは市場価値が高いため、より待遇の良い企業に転職したり他の企業に引き抜かれたりすることがあります。
このリスクは特に、専門知識が希少で需要が高い場合に顕著です。
スペシャリストが離職すると、その人が持っていた知識やスキルが失われ、組織のパフォーマンスに大きな影響を与える可能性があります。
ナレッジギャップの拡大させる
スペシャリストの存在が組織内のナレッジギャップを拡大させることがあります。
特定の個人に知識が集中することで、他のメンバーがその知識にアクセスしにくくなり、組織全体の知識レベルに差が生じることがあります。
これにより、スペシャリストが不在の際に業務が滞ることも考えられます。
依存度の増加
組織がスペシャリストに過度に依存することで、特定の個人に依存するリスクが増大します。
その人がいないと重要な業務が遂行できない、属人化とも言える状況が生まれれば、業務の継続性が脅かされます。
また、スペシャリストの意見が常に重視されることで、他の従業員の意見が軽視され、組織全体のバランスが崩れることがあります。
属人化になる可能性がある
スペシャリストが孤立して、依存度が高まることは属人化しているともいえます。
スペシャリストであるがゆえに、属人化してしまっているという場合もあるからです。
スペシャリストがいることは大きなメリットですが、スペシャリストであっても過度に依存や負担が増えてしまうと属人化と大差がない状態になってしまうので、スペシャリストを適切に扱うためには属人化しない工夫が求められます。
属人化とスペシャリストの違いを理解したらすべきこと
属人化とスペシャリストのさまざまな要素を比較することで、組織にとってどちらが有益であるかが見えてきます。
組織の発展のためには、属人化の解消とスペシャリストの育成を促進させなければなりません。
属人化の解消とスペシャリストの育成を遂行するためにはどのような取り組みが有効であるのか、属人化の解消とスペシャリストの育成を同時に行う場合の効果的な方法について解説します。
属人化の解消
多くのデメリットがあることからも分かるように、属人化が進むと、組織全体の業務効率や品質に多大な悪影響を及ぼします。
そのため、属人化は早急に解消することが重要です。
- 業務プロセスの標準化
- 情報共有を促進する仕組みの構築
- トレーニングや教育プログラムの実施
属人化の解消には、上記のような取り組みが有効であると考えられます。
これにより、組織全体での知識やスキルの均一化が図られれば、業務効率や品質の向上が期待できます。
スペシャリストの育成
スペシャリストは、組織の戦略的な課題や専門性が必要なプロジェクトにおいて不可欠な存在です。
また、組織の成長や発展のために重要なのは、組織内でスペシャリストを育成することにあります。
- 専門的なトレーニングや教育プログラムの提供
- 実務経験の積極的な提供
- キャリアパスなどの明確化
スペシャリストの育成には、このような取り組みが有効です。
組織の内部からスペシャリストを育成する仕組みをつくることで、持続的な競争力を獲得することが可能になります。
解消と育成の両立
属人化の解消とスペシャリストの育成は相反するように思えるかもしれませんが、組織全体の能力向上を図るためには、両者を両立させる必要があります。
解消と育成を同時に行う場合には、バランスの取れたアプローチが不可欠です。
そこで有効な手段として考えられるのが、デジタルツールの活用です。
デジタルツールは、業務の可視化や情報共有、コミュニケーションの活性化に効果的な手段で、属人化における課題解決にも有効であると言われています。
また、組織全体の知識レベルや業務効率、競争力の向上が期待できることから、スペシャリストの育成を支援するツールにもなり得ます。
属人化の解消とスペシャリストの育成は、どちらか一方に偏ると、組織力が失われてしまったり、属人化によるリスクがさらに高まったりしてしまいます。
それぞれのメリット・デメリットを把握したうえで、状況に合わせた適切な対策を講じることが重要です。
属人化の解消とスペシャリストの育成の両立にはzaico
属人化は個人の「依存」であり、スペシャリストは組織の「力」です。
組織全体の長期的な成長を実現するためには、属人化の解消とスペシャリストの育成をバランスよく進めなければなりません。
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また、外部サービスと連携することでより高度な在庫管理を実現できることから、スペシャリストの育成にも効果的なツールになり得ます。
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