業務の属人化は、企業の長期的な成長を妨げる問題です。
しかし、個々の担当者や職場のレベルで見ると、みずからの立場を有利にするために属人化わざとする場合もあります。
属人化をわざとする理由と属人化をわざとすることで生じる問題、属人化が有効なケースや属人化を防ぐ対策を解説します。
属人化をわざとすることはある?
業務の属人化は、一般的には組織にとってマイナスとされています。
理由としては、属人化になると業務が特定の個人に依存し、その人がいないと業務が停滞するリスクが生じるためです。
リスクがある属人化ですが、中には個人や職場の都合で属人化をわざとするケースも存在します。
業務を属人化することで、短期的には、個人の満足や組織の効率化に有効かもしれません。
しかし、属人化は諸刃の剣であり、使い方を間違えると大きな落とし穴となります。
属人化の問題を正しく理解し、適切な対策を講じることで属人化のリスクの低減や属人化をわざとさせないようにすることが大切です。
なぜ属人化をわざとする人や職場が存在するのか
なぜ、組織にとってはマイナスとされる属人化をわざと推し進める個人や職場が存在するのでしょうか。
属人化をわざとする理由として考えられるものを見ていきましょう。
自分の存在価値を高めたい
業務の属人化は、職場での自分の存在価値を高めたいと思っている人にとって、都合の良い手段です。
特定の業務を自分しかできない状況に置くことで、周囲から頼られ評価されていると感じて満足します。
このような人にとって、属人化によって組織に与える問題は二の次です。
情報やノウハウの共有は自分の存在価値低下につながるため、主体的な属人化の解消は難しいでしょう。
変化や新しいことに抵抗がある
属人的な仕事の進め方が、職場内の慣習として根付いてしまっている場合もあります。
変化や新しいことに不安や抵抗を感じる人は、現状維持を好む傾向にあり、属人化によって慣れ親しんだ方法で仕事を続けることを選びます。
例えば、ベテラン社員の中には、新しいやり方を学ぶよりも、今までどおりの仕事を好む人は少なくありません。
属人化が長期的に見て職場にマイナスであるとわかっていても、変革への第一歩を踏み出せず、属人化を続ける道を選んでしまうのです。
組織の責任逃れ
属人化は、管理者やリーダーによる責任逃れの手段として利用されることもあります。
特定の個人に業務の権限を集中させることで、上司やほかの社員はその業務に対する責任を回避することが可能です。
問題や失敗の責任が特定の個人に転嫁される状況は、組織全体の対応能力や危機管理が低下する原因となります。
属人化をわざと行うことで生じる問題
属人化をわざと行うことは、当事者にとっては意味があるかもしれませんが、組織的にはさまざまな問題を生じさせます。
属人化をわざと行うことで生じる問題について確認していきましょう。
業務の非効率化
属人化は、業務の非効率化を招く一因です。
属人化した業務は個人の能力やスキルに依存するため、担当者のパフォーマンスの限界以上に生産性や精度を高められません。
また、担当者にほかの業務が集中した場合などには、属人化した業務が滞ることになるでしょう。
組織内で情報やノウハウが共有されていれば、適材適所の業務分担も可能です。
しかし、属人化が進んでいる場合は組織的な対応が制限され効率が低下してしまいます。
休暇時や退職時の業務の停滞
業務が属人化していると、担当者の休暇時や退職時に業務が停滞するリスクがあります。
日常的には、属人化している方が業務がスムーズに回ることが多いかもしれません。
しかし、担当者が急に休んだり退職したりすると、業務内容を十分に共有されていない周囲の人がフォローできない状態に陥ります。
組織にとって重要な業務であった場合、業務遂行能力やサービスの提供に大きな影響を与えてしまう可能性もあるでしょう。
コミュニケーション不足
属人化は、情報共有の阻害につながり、組織全体のコミュニケーション不足も招きます。
属人化した業務は、特定の担当者以外の社員は業務内容を把握できていない状態です。
担当者がいなければ業務が回らないため、周囲の社員は口を挟みづらく、組織の風通しが悪くなります。
このような環境が常態化すると、コミュニケーション不足による士気低下や意思決定の遅延など、組織的な問題を引き起こすことにつながるでしょう。
ミスが発覚しにくい
属人化した業務は、ミスが発生した場合に発覚しにくいという問題も抱えています。
属人化によって業務の内容が周囲に共有されないため、ほかの社員によるチェックが機能しません。
担当者がミスを認識していない場合はもちろん、ミスに気づいているにもかかわらず意図的に隠すことも考えられます。
このような環境では、問題の早期発見と対応が遅れ、大きな問題へと発展するリスクが高まるでしょう。
知識やスキルの喪失
属人化により知識やスキルが共有されなくなると、組織から喪失される可能性があります。
属人化した業務は、担当者以外の社員が業務内容を学ぶ機会がなくなり、知識やスキルを身につけられません。
担当者が退職した場合、引き継ぎが適切に行われないと、属人化されていた知識やスキルが組織から失われてしまう可能性があります。
後任は一から知識やスキルを習得せねばならず、余計な時間とコストを費やすことになるでしょう。
属人化をわざと進めることでうまくいく業務もある
属人化は多くの場合、組織にとって問題があるとされています。
しかし、業務の性質や組織の状況によっては、必ずしも「属人化=悪」という訳ではありません。
属人化をわざと進めることでうまくいく例を見ていきましょう。
高度な専門性が必要な業務
高度な専門性が必要な業務では、属人化が有効な場合があります。
例えば、高度な研究開発や、ノウハウの流出・模倣を防止すべき業務、顧客との信頼構築が重要な業務などは、属人化が正当化されやすいでしょう。
ただし、こうした業務でも、長期的な視点で後任の育成や知識の共有は忘れてはなりません。
属人化が行き過ぎることのリスクを最小限に抑えるための対策を講じることが必要です。
緊急性が高く臨機応変な対応が求められる業務
属人化が効果を発揮しやすい例として、緊急性が高く、臨機応変な対応が求められる業務も挙げられます。
こうした業務では、即座に決断を下し、迅速に行動を起こすことが重要です。
そのため、経験豊富で状況判断が速い特定の個人に、業務を集中することが合理的な場合があります。
例えば、危機管理やトラブルシューティングなどが該当するでしょう。
しかし、このような属人化もキーパーソンが欠けると組織としての対応力が著しく低下しかねないため、後任の育成は重要です。
小規模なプロジェクトや短期間のミッション
小規模なプロジェクトや短期間のミッションも、属人化が効果的に機能する場合があります。
こうした業務は、限られた時間とリソースの中で迅速に結果を出すことが必要です。
そのため、特定のスキルセットを持った少数精鋭で進めることが有効なことが多いでしょう。
例えば、緊急の市場調査や機関限定のイベント企画・運営などが該当します。
ただし、いつまでも同じメンバーに頼っていると、属人化が深刻化して組織の成長は見込めません。
プロジェクト終了後は、経験や知識を共有し、組織知として蓄積していくことが重要です。
属人化をわざとさせないための対策
属人化をわざと進める人や職場が、自分の意思で属人化を解消するのは難しいでしょう。
トップダウンで仕事の進め方や社員の意識を変革することが重要です。
属人化をわざとさせないための対策を紹介します。
業務プロセスの標準化
属人化をわざとさせないためには、組織的な業務プロセスの標準化の取り組みが有効です。
業務プロセスの標準化により、特定の個人の裁量を減らし、組織的に同じ品質・効率で業務を実行できるようになります。
業務マニュアルやチェックリストの作成、業務研修の実施による知識やノウハウの共有などがその一例です。
業務プロセスの標準化は、属人化をわざと進めることを防ぎ、組織全体の業務遂行能力向上に役立ちます。
評価制度の見直し
評価精度を見直すことも、意図的な属人化の防止に効果的です。
個人の実績やパフォーマンスに偏った評価精度は、担当者による業務の属人化を助長する可能性があります。
チームとしての成果や、知識・ノウハウの組織へのフィードバックなどを評価の対象に含めることで、属人化に対する動機を減らせるでしょう。
これにより、社員が単独で成果を上げるよりも、チームとしての成功を重視する企業文化を醸成することが期待されます。
情報共有のシステム化
社内で情報を共有するためのシステムを導入することで、属人化の防止にも役立ちます。
情報共有システムの活用により、知識やノウハウがオープンになり、特定の担当者による情報の占有を防ぐことが可能です。
例えば、Excelで管理していた業務のクラウドサービスへの移行や、ナレッジ共有システムの導入などが挙げられます。
これにより、人が入れ替わっても業務の継続性を保ち、組織としてスムーズな業務運営が実現できるでしょう。
在庫管理業務の属人化を防ぐなら「zaico」
業務の属人化は、企業の長期的な成長を妨げる問題です。
しかし、中には自分の存在価値を高める目的や、責任逃れなどの動機から、わざと属人化を進める個人や職場も存在します。
このような、わざと属人化を進める問題を防ぐために、業務プロセスの標準化や情報共有のシステムの導入が有効です。
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